2025年3月3日から3月30日までの4週間、KSESトラベリングフェローシップに参加し、韓国の18施設で手術見学を行うとともに、KSESの学会にも参加する貴重な機会をいただきました。このような素晴らしい経験を与えていただいた国際委員会の先生方、並びに肩関節学会の皆様に深く御礼申し上げます。前半の2週間は吉田先生にご報告いただきましたので、ここでは私より後半2週間の内容をご紹介いたします。
Day15, Dr. Woong-Kyo Jeong (Korea University Anam Hospital)
Korea University は韓国の私立大学の中でもトップクラスで、日本でいえば慶應義塾大学に相当する存在とのことでした。歴史ある大学で、ソウル中心部のアクセス良好な場所に位置しています。
手術は側臥位で3件ほど、非常にスムーズに進行されていました。夜には行きつけというお肉の美味しいレストランに連れて行っていただき、ワインとも相性が良く大変印象に残りました。
先生は当時、頚椎症性神経根症による左手のしびれに悩まれており、つらそうに手術をされていた姿が忘れられません。次にお会いする際にはご回復されていることを願っております。
Day16, Dr. Yong-Min Chun (Yonsei Chunyongmin Orthropedic hospital)
ソウル近郊で昨年開業された先生で、近隣の大学病院の元教授とのことでした。元の大学からの患者さんを継続して診療されているようで、若手医師の先生と2名体制で、大学との連携を保ちながら運営されていました。
クリニックの地下には手術室が3つあり、来年からはさらに2名の若手医師を迎え入れ、拡大していく予定とのことでした。韓国でも開業ブームが起きており、大学教授の若年化が進んでいるというお話も伺いました。
Day 17, Dr. Jun-Gyu Moon (Korea University Guro Hospital)
こちらも Korea University の分院で、ムーン先生は肩ではなく肘のスペシャリストとのことで、多くの肘手術を見学させていただきました。肩が中心の訪問の中で肘の専門医は珍しく、大変勉強になりました。
医局には関節鏡の歴史がわかる展示コーナーがあり、日本で開発された関節鏡が紹介されていて、日韓の医療交流の歴史を感じることができました。ムーン先生は2024年にトラベリングフェローとして日本を訪問されており、日本の先生方をよく覚えておられました。
Day 18, Dr. Doo-Sup Kim (Wonju Severance Christian Hospital)
キム先生はフロリダ大学に留学経験があり、動作解析に関する論文を多数執筆されている先生でした。夜の食事会では多くの若手医師とアシスタントの先生方と交流することができ、非常にエネルギッシュで若手に慕われている様子が印象的でした。
手術は2〜3件見学しましたが、そのスピードと効率性は圧巻で「タイパ(タイムパフォーマンス)重視」とご本人がおっしゃっていました。
なお、事務局の手違いで私たちの到着日が1日ずれて伝わっていたようで、珍しい症例を多く準備してくださっていたものの見学できなかったことは残念でした。
Day 19, Dr. Young-Min Noh (Busan Medical Center)
ノウ先生は大変な親日家で、2024年に日本でのトラベリングフェローシップに参加されたとのことでした。午前中の手術後には釜山の観光にも連れて行ってくださり、その厚意の理由を尋ねると「日本でとてもよくしてもらったから」とおっしゃっていたことが心に残っています。
Day 22, Dr. Yon-Sik Yoo (Camp 9 Orthopedic Clinic)
Yoo先生も大学近くで開業されており、テナント内に設置された手術室で手術を行っていました。肩甲上神経に関する研究を多数発表されており、研究面でも大変勉強になるお話を伺うことができました。
Day 23, Dr. Jong-Pil Yoon (Kyungpook National University Hospital)
テグという街にある歴史ある大学の教授であるJP先生は、基礎・臨床の双方で多くの優れた業績を挙げておられる先生でした。手術では一般的なRSAを見学させていただき、その後には基礎研究に関するプレゼンテーションをご紹介いただきました。内容は、日本でも最近使用されている痩身薬が腱板修復に及ぼす影響を検討した研究で、大変興味深いものでした。
午前の手術とプレゼンの後には、テグの歴史資料館に案内していただき、ハングルの成り立ちについて丁寧に教えていただきました。ハングルは約600年前に作られた比較的新しい文字であり、非常に理論的に構成されていることから「世界で最も学びやすい文字」とも言われているそうです。
JP先生は米国にも2年間留学されており、基礎研究に対して深い造詣をお持ちであるという印象を受けました。また、最終日のKSESでは最高賞を受賞され、その実力の高さを改めて実感しました。
テグは韓国第3の都市とされていますが、肩関節領域に関しては特に情熱の高い都市であると強く感じました。毎年冬には、テグの雪山で「ショルダーキャンプ」と呼ばれる合宿形式のトレーニングを開催されているとのことで、機会があればぜひ参加したいと思っております。
Day 24, Dr. Hyun-Chul Jo (Seoul National university Boramae Medical Center)
日本で言うところの東京大学に相当するソウル大学の分院であるソウル・ボラマエ病院のJo先生は、非常に精力的に多くの手術をこなされており、その手術待機期間はなんと2年にも及ぶとのことでした。
夜には、羊肉を提供する特別なバーを貸し切ってくださり、スタッフの皆さんとともに食事をご一緒させていただきました。
Jo 先生は大学時代に大きな怪我をされた経験があり、その影響で兵役を免除されたとお話しされていました。兵役免除により39か月のアドバンテージが生まれ、その分、医師として研究に集中する時間を確保できたと語られていたことが非常に印象的でした。
Day 25, Dr. Jae-Hoo Lee (ilsan Paik Hospital, Inje University)
北朝鮮に非常に近い地域に位置する大学病院で手術をされているリー先生を訪問しました。地理的に緊張感のあるエリアに近いこともあり、どこか特別な空気を感じましたが、手術自体は淡々と通常どおりに進行していました。
大結節骨折に対する鏡視下骨折関節内整復固定術を施行されており、難易度の高い症例でしたが、苦労されながらも最後まで丁寧に完遂されていた姿が大変印象的でした。
Day 26-27 KSES
KSESでは、日本からも多くの先生方が参加されており、韓国の先生方と交えて活発な交流を深めることができました。最終日にはトラベリングフェロー記としてプレゼンテーションの機会をいただき、僕自身の研究概要を伝える事ができました。さらに、これまで見学させていただいたほぼ全ての病院の先生方と再びお会いして直接御礼を申し上げることができ、まるでお祭りのような楽しいひとときでした。
Day 28, 帰国
長いようで短かった28日間を終え、帰国の途につきました。今回のフェローシップ期間中、韓国国内では大規模ストライキの影響が続いており、多くの施設ではフェローが不在となり、手術件数も制限されるなど、非常に厳しい状況だったようです。そのような中でも温かく迎えてくださったすべての先生方に、心より感謝申し上げます。
この4週間は、大変濃密で、多くの出会いと学びに満ちた、私にとってかけがえのない時間でした。技術・哲学・価値観など、多方面から大きな刺激を受けることができたことを嬉しく思います。
今後、KSESトラベリングフェローシップに挑戦される先生方がいらっしゃいましたら、ぜひ応募していただき、日韓の友好をさらに深めていただきたいと思います。私自身、この経験を通して韓国に対する印象や感情が大きく良い方向へ変化しました。
最後に、旅をともにした吉田先生には、現地でのさまざまな場面——特に宴席では大いに助けていただきました。この場を借りて、改めて感謝申し上げます。