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肩関節学会40年史

第18回日本肩関節学会会長

会長
水野耕作

開催日時 1991年11月15‐16日
開催場所 神戸市 神戸国際会議場
第18回学会の検討課題と学術講演内容
①研究会から学会への改称
 この第18回より肩関節研究会から日本肩関節学会に改称しました。それまでは日本整形外科学会や中部日本整形外科災害外科学会や日本手の外科学会などを除き、ほとんどの専門領域の学術集会は研究会として開催されていました。肩疾患のspecialistたちが細部の問題を討議するには、研究会の雰囲気が適していました。しかし、整形外科関連のみならず他の領域でも、全国的に多くの研究会や学会が開催されるようになり、肩関節研究会でも参加者数が増加して、規模的にも内容的にも学会に相応しい雰囲気となってきました。そのうえ、会議場の使用許可順序や協賛団体の賛助方法も学会と研究会とに差別を生じるようになり、1990年研究会終了日より1年間、幹事会で検討の上1991年の集会から日本肩関節学会となりました。

②Journal of Shoulder and Elbow Surgeryに対する日本編集委員会の編成
 1990年にAmerican Shoulder and Elbow Surgeonsを中心として、肩肘関節に関する国際雑誌JSESの創刊が具体性を帯びるようになり、第18回日本肩関節学会の幹事会が中心となって編集委員会を立ち上げました。(国際交流の項目を参照)

③第18回日本肩関節学会の学会内容について
1)招待講演 
W.Z.Burkhead, Jr.MD
W.B.Carrell Memorial Clinic, University of Texas, USA
“Design rationale and clinical application of the select shoulder system in glenohumeral arthritis”
 当時は米国の若手の肩関節専門医を招聘しました。彼自身の人工肩関節の製作に取組み、その臨床応用に関する講演です。現在、彼はASESの重鎮です。

2)特別講演
髙岸直人名誉教授
「肩関節と私」 福岡大学整形外科名誉教授
長年にわたり日本肩関節学会に貢献され、福岡大学整形外科主任教授を退官されました。その経験などを講演されました。

3)学会演題内容 テーマ
・抄録演題数は2講演を含めて90題です。
・主題 「肩関節不安定症」33題
 それまでに、動揺肩Loose Shoulder、随意性肩関節脱臼、習慣性肩関節脱臼や反復性肩関節脱臼など多くの疾患名が乱立し、病態の混同や治療法の不一致、それに不適切な診断と治療法などによる成績不良などが問題視されていました。そこで、肩関節の不安定性に関わる原因、病態、検査方法や治療法など検討し、不安定な肩関節を分かり易いように分類し、それに対するアプローチを確立しようとして主題テーマに取り上げました。全演題の約1/3以上がこのテーマに含まれています。その当時、肩関節不安定症に多くの興味が注がれていたことがわかります。
 その内容の一部を紹介すると、
外傷性肩関節脱臼と非外傷性肩関節脱臼の鑑別を明確にするために種々の工夫が見られます。臨床症状の特徴、X線撮影方向、関節造影撮影などの検査方法の工夫などが報告されました。それに、MRIの導入により外傷性肩関節脱臼の病態がかなり明確になり、CT撮影と空気あるいは造影剤との併用により、非外傷性と外傷性との鑑別にも有用性のあることを指摘されました。さらに、関節鏡が導入され、外傷性肩関節脱臼の局所の病態、特に前方関節唇断裂や前方関節包断裂がはっきりするようになり、一部の施設ではBankart関節鏡視下手術もかなりの症例数に達しましたが、未だ、鏡視下手術の技術論や経過報告に注目される段階でした。なお、これまでどおりのBankart原法、Bristow変法やBoytchev変法やCapsular shift法も報告されました。結局、非外傷性肩関節脱臼を明確に除外することにより、外傷性肩関節脱臼の手術成績が向上されることになりました。

会長 水野耕作

W.Z.Burkhead, Jr.MD